オンキヨーの年収と福利厚生

■ オンキヨーの年収モデル


有価証券報告書によると、オンキヨー株式会社の従業員は平均年齢43歳で平均年収617万円となっている。そのため年収が高いのかと思われそうだが、これは中堅層がごっそりと抜け、中央値が比較的年齢の高い管理職に偏ってしまっていることが高額に見える原因。実際の全体的な年収はかなり低く、大学を卒業して新卒入社した場合、入社1年目、2年目は年収が200万円台で、月々の手取りは14万円程度となる(高専卒の場合はもっと低い)。その後も伸び率は低く、主任で400万円、係長で450万円前後。管理職にならない限り、年収500万円の壁は越えない。生涯賃金はかなり低い。

課長になってようやく年収は600万円に届く感じであり、努力して出世しても給料に関してはあまり報われない。また、年収が1000万円を超えるであろう役員には、ほとんど外部から来た人間が就任するため、お金に関してはサラリーマンが夢を見れない会社。

<オンキヨー年齢別・役職別年収モデル>
・25歳 300万円
・30歳 400万円(主任)
・35歳 450万円(係長)
・40歳 600万円(課長)
・50歳 800万円(部長)


■ 給与制度の特徴


初任給は他企業と同程度だが、ボーナスが少ないことに加え、入社後の昇給スピードが他社と比べてかなり緩やかであるため、結婚して子供が出来てくる40代以降の生活設計が難しくなってくる。上場企業(東証JASDAQスタンダード)として見ても、業界水準から見ても、年収水準は平均以下。オーディオ好き、機械好きなどの理由がないと働き甲斐、やりがいを見出すのは難しいだろう。

賞与年2回、昇給年1回。毎年の昇給は4000円程度。J2→J1→L2→L1といった職位が有り、4~6年で1つ上がる。上がるごとに月1万円+α程度昇給する。昇進に何年かかるかは個人の努力次第だが、業務量よりも携わった製品が売れたかどうかが影響しやすい。給与体系は透明性が高いので自分がどの資格になるといくらもらえるかは、はっきりとわかる一方、給与の伸び率が低く、管理職になってもその傾向は変わらない。

年功序列の給与体系は強固なシステムで、高専卒の給与が大学卒の給与に追いつくことはない。そして文系職と理系職の給与はまったく同じ。このような状況から、特に技術系社員において30代前後で他企業や公務員への転職者が増える。若手社員が少ない。


オンキヨーの年収・給与


■ ボーナスと加給金制度


賞与は少なく、基本は給与の2ヶ月分。年2回支給されるが、業績連動のため経営状況が悪い時は満額もらえることはない。一定額退職金が年次加給される加給金という制度があり、それを冬季賞与でもらうか、確定拠出年金に回すか、という選択をすることとなる。


■ 福利厚生制度


住宅手当は最大1万円。但し会社業務の都合で転居となった場合は2年を限度として月5万円程度の住宅補助と自宅への帰省費用(月1回)が支給される。借上社宅のケースもある。家族手当、資格取得報奨金、通信教育補助、社員持株制度といった福利厚生もあり、社内語学教室も開催されている。残業代は全額支給(組合員のサービス残業は禁止されている)。その他の手当は管理職または技術職の職位に応じた手当が数万円程度ある。

コストの締め付けがかなり厳しいため、国内出張手当は一日2,000円、海外は3,000円という他社から見れば信じがたい水準が支給されている。

自社製品は安値で購入することが可能。株主である場合は株主優待でオンキヨー製品・サービスのクーポンをもらうことができ、オンキヨーダイレクトでアウトレット製品を購入したり、ハイレゾ音源配信サイトe-onkyo musicでハイレゾをダウンロードすることができる。

風通しの良い社風

■ 風通しが良く、仲の良い社風


社風は風通しが良く、管理職も人格者が多い。従業員は関東出身者が多く、関西独特の会社という雰囲気が余りない。人間関係もよく、人間関係で困るということはほぼ皆無。ギスギスしているような雰囲気もなく、おっとりとしたホワイト企業の傾向があり、雰囲気は悪くない反面、積極的に業務に取り組もうとしている感じがあまりない。どちらかというと横並びであることが求められている。

業務外では飲み会が活発。先輩や上司ともコミュニケーションを取る機会は多く、風通しは良い。組織としても風通しが良く、若手社員でも取締役レベルの重役と積極的に話せる機会が多い点などは評判が良い。

社風を悪く言えばヌルい。競争心がない。業界自体が斜陽産業のため、そこで働く人間も競争力がなく、漫然と働いている人が多い。業績不振時にリストラが行われたにも関わらず危機感のない社員が多い。終身雇用ではないものの、家庭的な雰囲気とのんびりできる環境はあるので、それに満足しているひとはいいと思う。社風が古臭いイメージどおりの本社の設備もかなり老朽化しているため、あまり快適とは言えない。

マーケットで求められる製品ではなく、社員が作りたい製品を作る文化がある。それで製品が売れなくても大して気にしない。その為、趣味の延長で事業が成り立っている傾向が強く、儲けるという意識が低い。


■ 音楽好きの社員たち


オンキヨー(音響)というだけあって、音楽好きで音楽にこだわりを持った社員がが多い。オーディオやコンポ・スピーカー・アンプ・イヤホンに詳しかったり、楽器弾いたり、バンドをやっている人たちもたくさんいる。以前は社内音楽祭など、年に2回社内ライブが行われていた。


■ 管理部門の強い社風


トップダウンで社内組織の変更、人事異動がしばしば行われる。営業、開発などの部門よりも人事が一番権力を握っており、人事部に逆らうと出向、降格、退職勧奨が行われる。昇格も人事部の影響が大きい。経理部などのバックオフィス部門も強い発言権を持っており、営業や開発部門の社員は肩身が狭い。これは、オーナー企業の社長と管理部門社員の距離が近いことに原因があるだろう。


■ 頻繁な組織再編


組織が頻繁に変更されており、事業セグメントごとに分社化を図るなど経営の再構築が図られている。近年、自社だけで生存していくのは厳しいと判断したため、ギブソンやティアックと資本提携、部分統合し、さらにはパイオニア(pioneer)のAV部門と合併した会社(オンキヨー&パイオニア株式会社)を設立したため、グループ全体の組織はかなり複雑になっている。


■ ファミリー企業


オンキヨーはファミリー企業であるため、創業家が絶大な力を持つ。今は長男、大朏直人氏が名誉会長、次男の大朏宗徳氏が社長。昔ながらのトップダウン経営で社長や重役の発言は絶対の会社。腰の重たい体制を変えていこうという意識はあるが、一般社員レベルの意見はなかなか取り入れられない。労働組合もあるが、基本的には会社には逆らえない文化。

出世したいのであれば、創業家に食い込まなければ将来は望めない。逆に食い込めれば子会社の社長を任されたり、突然役員に登用されたりする。本社上層部の人事面では不可解な人材登用がまかり通っており、外部から来た人たちが多い。


■ 人材流出


2015年頃に行われた大幅なリストラにより、40歳以上の平社員をほぼ全員切ってしまったため、部下のいない上司と若い社員だけになった。従業員数は単体で200名前後、連結でも1500名程度しかいない。社員同士の仲はそこそこ良いが、会社に対して明るい未来が見えず仕事への熱意や士気が低い。未来の見通せないことに危機を感じ優秀な人からどんどん辞めている。こうした人材流出が起こっていることへの問題意識が少ないことと、人材育成についてきちんとしたプランニングがされていないことが大問題である。

その結果、稼ぐ知恵や統率力を持った上司がおらず、創業家へのゴマすりが上手なだけで芯のないナヨナヨした人ばかりが管理職として残ってしまった。長期的な事業戦略の提案やマーケット開拓力が皆無で実現力も指揮力もなく、ますます見通しは険しい。

なお、リストラ候補になると逃げ道はなく、基本給与3ヶ月分で有無を言わさず退職を強要されるブラック企業の一面もある。

教育とキャリア制度

■ 教育制度はOJTが基本


どの部署も先輩や上司は優しい人が多く、少なくとも体育会系ではないので、どの部署でも先輩・上司から基本的な業務スキルをOJTで比較的に丁寧に教えてもらえる。それから後も自分の希望するキャリアプランやそれまでの仕事の成果に沿って部課長と相談の上で、比較的早いペースで次のステップに進むことができる。見込まれれば若手であっても部署内の責任ある業務を任されるので、プレッシャーはあるが経験は積める。

人員が少ないこともあり、入社1年目から、責任ある仕事を1人で任される。行程の上流から下流まで全てに関わることができ、仕事の全体像をつかむ事ができる。その反面、一つ一つの業務の精度が下がりやすく、専門性を高めるなどの突っ込んだ能力を身につけるのが難しい。また、当個人に責任がのしかかり、全て担当任せになってしまっている傾向もある。

海外出張が多く中国やマレーシアで行く機会がある。普段の業務から海外とのやりとりは多く、グローバルな仕事をしているような気分になれる。教育制度はOJTと通信教育と定時後の語学教室位のため、特に専門的なことは自分で勉強する必要がある。


■ 研究開発


若い人なら基本的な技術、常識を身につけることができるが、ある程度の年齢からは技術的なキャリアアップができる環境ではない。斜陽産業で新規技術も特になし。


■ 出世と学歴


学部卒や高専卒のプロパー社員の場合、給与や階級がなかなか上がらない。一方で、院卒入社と中途入社・キャリア採用の社員がかなり優遇されていて、昇進も早い。また役員を見ると他社から来た人がほとんどで、プロパー社員は役員まで昇進することが難しいことは確かである。


■ 異動は少ない


技術者の転勤はほぼない。ほとんど大阪本社での勤務。事務系や営業社員は東京・大阪間の異動があるが、一般的な会社と比べた場合、異動は少ないと思われる。


■ わずかな研修制度


研修制度は語学研修はあるが自己負担。入社時に新人研修がある程度で、その後2年目研修、中堅社員研修以外には特に研修はない。最新の技術・知識を持つには自分で積極的に学習しないと何の成長もない。


■ 曖昧な人事評価制度


人事評価は、 評価制度にありがちな目標設定型評価。チェックシートに記入して上司と面談することにより決まる体裁が整っているが、中身を厳密に確認されるわけでもなく、昇給・昇進は上司やその上のさじ加減ひとつで決まる。ファミリー企業ということもあり、正当な評価をされているイメージがない。よって、何時間もかけて書くチェックシートにほとんど意味は無い。人事評価はボーナスに多少影響を与えるが、そもそもボーナスがここ数年1~2ヶ月程度しか出ていないため影響は少ない。なお、いくら評価がよくても、飛び級を認めるようなシステムはない。

事業の強みと見通し

■ オンキヨーの強み


国内AVメーカーの老舗。オーディオ業界では一応ブランドがある。車載用音響のOEM事業など、同業他社がやっていない、オリジナリティを生かした商品やサービスを打ち出す挑戦的な気質がある。ホームシアターやアンプ・スピーカー内蔵のテレビ台は同社が先駆けであり、ほかにもオーディオとパソコンの融合に取り組んだり、最近ではハイレゾ音楽配信での先駆者となっている。


■ オンキヨーの弱み


オーディオ業界として市場が縮小していることが最大の弱み。買収したソーテックのパソコン事業では中途半端にボリュームゾーンに手を出して失敗したことなど、非オーディオ分野での事業失敗の影響を引きずっている。オンキヨーグループ全体として何か新しい発想が必要だが現時点では現存の製品をブラッシュアップするのが精一杯。技術力、営業力、資金力が無く、結局本業回帰になってきているように見受けられる。近年の業績悪化に伴い、若手社員が大量に退職しており、人材不足。

製品の質(音質、完成度)はハイレベルであるがマーケティング面、広告や販売方法などが非常に下手だと言われている。商品においても現場(消費者)の意見を重視するよりも製品企画者の考えの押し売り傾向がある。


■ オンキヨーの抱える課題と事業展望


オーディオ業界が全体的に縮小しており、今後も回復することは100%ありえない。その状況を打開するためにソーテックを買収しPC事業に乗り出したが完全に失敗し、今はPC事業は本体から切り離して無かったことになっている。それに代わる事業の柱がまだ作れていないことが大きな課題。

音楽のライフスタイルが多様化し、一大マーケットを形成するような突出した商品ジャンルは将来的に期待できない。ヘッドホンやカーオーディオといった既存のオーディオ市場で、さらには補聴器や楽器といったオーディオから派生した市場で、経験とブランドを生かしてどれだけ勝負できるかがカギ。ハイレゾ対応のスマホ「GRANBEAT」もその一例。また、コンシューマー向けの高級スピーカーは世界規模で需要が減っているので、今後は法人向けのビジネスが増えていく可能性が高い。

最近では積極的にM&Aや、知名度の高い同業大手との提携がなされている。ティアックやパイオニアのオーディオ部門(パイオニアホームエレクトロニクス)と統合し、またカワイ楽器とも資本提携を行い、生き残りを図っている。

海外展開を積極的におこなっており、中国を中心としてアジアでの製造から、北米、欧州での販売まで広く展開しており、フィードバックとして日本での製造をより確かなものへ築いている印象。


■ オンキヨーの競合会社


ヤマハ(ヤマハ株式会社)
AV製品で最大のライバル。特にホームシアター。各種広告媒体などをフル活用し、商品を何段階も格上げして消費者に見せるなど、販売戦略が上手い。ユーザーに一番近い各販売店においてヤマハブランドは人気がある。

デノン(株式会社ディーアンドエムホールディングス)
以前は眼中に無い存在だったが、今となっては完全に負けた。製品デザイン、コンセプトが依然と比べて明らかに改善されている。製品の使いやすさ、使い勝手など洗練されていない部分はあるが、専門店などでは人気が高い。2チャンネルオーディオも真面目に手がけており根強いファンが多く見られる。

その他、東京に本社のある「株式会社オーディオテクニカ」はヘッドホンなどの音響機器で有名(但し非上場)。

残業とワークライフ

■ 残業は少ない


全社的に残業は少ないが、技術、品質にこだわっている企業であるため、問題が起こった場合には解決するまでは帰れないようになっている。設計、開発部門だけは残業が多く、終電や徹夜になることもある。残業自体は40時間以内と区切られているが、そもそもそこまで残業を行う部署は開発部隊以外特にない。

労働組合があるため、サービス残業は基本的に存在しない。一方で管理職は裁量労働制のため、忙しい部門ではワーク・ライフ・バランスの調整は困難。但し、ノー残業デーの導入など全社的に残業時間の削減を推進している印象は強い。

忙しい時期とそうでないときで差が激しく、毎日定時上がりが一ヶ月続くこともあれば、休めるのは13日に一回だけで、月2日程度しか休め無いこともある。しかし、休日出勤した分は6ヶ月以内に消化する必要が有るため、非常に休みやすい。代休はしっかり消化させてくれるので、こうした繁忙期が終われば1週間ほど休みを取ることも、問題なくできる。


■ 年間休日125日


年間休日が125日以上あり意外に休みが多く旅行などプライベートを楽しめる。ゴールデンウィークやお盆休み、年末休暇もカレンダー次第で連続10日以上になる年もある。フレックスタイム制度や、有給休暇が取得しやすいなど、家族とのイベントなどのプライベートとのバランスを取りやすい環境が整っている。


■ フレックスタイム制とノー残業デー


フレックスタイム制度が導入されており、朝早く来社して、夕方早く帰ること等が可能となっている。これにより、個人の業務範囲は広いが、ある程度自分でコントロールすることができる。繁忙期は担当製品のスケジュール次第。

水曜日はノー残業デー、全社的に早く帰ることができる。基本的には土日は休みなので、プライベートの時間はしっかりとれる。


■ 有給休暇は取りやすい


有給、長期休暇は非常に取得しやすい。申請すれば、ほぼ承認される。前日申請でも基本的に問題ない。また、申請も自己申請で上長許可も必要としないため、海外旅行の計画なども容易に立てられる。社員同士でも、休暇を積極的にとろうとする風潮があり、協力して休暇取得できる。但し、仕事の調整が出来ている事が前提。

女性の働きやすい会社

■ 女性の昇進


昇進は男女の差なく実力で決まるため、既婚未婚を問わず、平等に評価される。女性だからといって男性よりも理不尽な業務が押し付けられるようなこともなく、やりがいを持って働くことができる。一般職でも活躍している女性は多数いる。また、育児休暇も問題なく取得でき、既婚女性は配偶者の転勤等やむを得ない事情以外は退職が殆どない。管理職も理解者が多く、女性にとっては非常に働きやすい環境。女性向けの福利厚生が充実している、というよりは、男女平等に評価されるような制度が確立されている。

雇用形態の変更(正社員から契約社員へ、契約社員から正社員へ)も可能なため、ライフスタイルが変化しやすい女性でも臨機応変に働くことができる。また女性一般職で、長く勤務されている方も多いです。


オンキヨーの年収・給与


■ 管理部門・スタッフ職の女性


電機業界・会社規模の割には比較的女性管理職の数が多い。実際に部長クラスに女性がいるし、人事も女性が多い。女性の管理職登用は、積極的に進められている。ただ仕事は容赦なく割り振りされるので、子供のいる女性社員はペースダウンして働くことになる。



■ 産休・育休


産休後、復帰して産休以前と同じように働いている女性社員が多い。育児休暇を取得してから、育児休暇か短時間勤務等が優遇されており、女性には好評である。管理職にも女性は多数いるため、女性に関する評価は平等に行われているようだ。