オーディオ産業の衰退(2019/07/04)

 スピーカーメーカーのオンキョウが外国の資本に買われる。以前にも、いくつかのオーディオ・メーカーが外資の下に入ったと聞いていた。日本のオーディオ・メーカーの優れた技術やかつての元気な姿を知る年配のオーディオファンである筆者には寂しいかぎりだ。

 なぜ、勢いを失ったのか。基本的には市場が縮小したからだろう。また、今の若い人たちにとって、自室にスピーカーを並べ、オーディオアンプとつないで、音楽に浸る生活より、スマホにヘッドホンを接続して気楽にダウンロードした音楽を楽しめるからだろうか。 

 筆者の少年時代はアナログレコードとFM放送だけだった。会議の録音用とされていたカセットテープをオーディオの主役にまで押し上げたのはほかでもない日本メーカーの技術力だった。

 時代が進み、デジタル時代になってCDが登場した時、ノイズが全く入らない音楽に感動した。その頃欧米の町のオーディオショップでは、日本製品が一番目立つ位置に陳列されていた。にもかかわらず、国内では、オーディオ評論家たちが外国製品を称賛していた。まさに青い鳥は外国とされていた。

 日本の乗用車も評論家の評価が低かった。しかし、排ガス対策や燃費の良さ、そして何よりも故障がない品質と信頼性が評価されて、日本の自動車技術の世界の評価が上昇した。

 自動車と異なりオーディオ技術には、客観的音質の基準がないわけではないが、聞く部屋の大きさや反響の状態、スピーカーの位置により音質が変わりやすい。音は時間ともに消えるから、記憶に頼る議論となり音質を定量的に論ずることは難しい。だから、オーディオファンは評論家の意見やメーカーの宣伝に影響されやすい。 

 一方、オーディオ・メーカーは自身の技術をじっくりと熟成させて美しい響きを再現させるよりは、縮小気味の市場の中で、次から次へと新しい流れを追い求めすぎたのではないだろうか。例えば、ハイレゾなど、耳には聞こえない音域をむなしく探索したとしか思えない。

 現状では、外国資本のもとに入った日本のオーディオ技術やブランドが逆輸入され、幸せを呼ぶ青い鳥は身近にいたと再評価されるのを期待しつつ、ファンとして声援を送りたい。

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